コラム

ふるさと納税ってどうして始まったの?そのきっかけと成り立ち

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ふるさと納税が創設された経緯

ふるさと納税は、日本の税制の中でもユニークな仕組みとして誕生しました。その背景には、地方と都市部との税収の偏りを是正し、地域を元気にするという強い思いがありました。

制度誕生のきっかけ

この制度の始まりは、2006年に福井県知事だった西川一誠氏が提案した「故郷寄付金控除」に遡ります。彼は「地方で育てた人材が大都市へ流出してしまい、その結果、地方の税収が不足する」という課題を強く意識していました。そこで、故郷や応援したい自治体に寄付をすることで、その地域を支援できる仕組みを作ろうと提案したのです。

このアイデアは国にも採用され、2008年に「ふるさと納税」として制度化されました。納税者が寄付先の自治体を自由に選び、その寄付金が所得税や住民税から控除される仕組みが誕生したのです。

東日本大震災と制度の注目

ふるさと納税が大きく注目されたのは、2011年の東日本大震災でした。それまでは制度自体の認知度が低く、利用者も限られていましたが、この震災を契機に、被災地支援の新しい手段として広く認知されるようになりました。募金やボランティアとは異なり、ふるさと納税を通じて被災地の復興を直接支援できる点が、多くの人々の心を掴んだのです。

震災を機に、寄付者の目的も「故郷支援」だけでなく「応援したい地域や活動を選ぶ」という形に多様化しました。こうした動きが制度の利用者拡大に大きく寄与しました。

ワンストップ特例制度の登場

2015年には、「ワンストップ特例制度」が導入され、ふるさと納税の手続きがさらに簡単になりました。この制度は、給与所得者で確定申告が不要な人が利用でき、次の条件を満たす場合に適用されます。

  1. 確定申告や住民税申告が不要であること。
    1. 1年間の寄付先自治体が5箇所以内であること。

      この制度では、寄付先の自治体に特例申請書を送るだけで、寄付金控除を受けられるようになりました。このシンプルさは、特にサラリーマン層を中心に利用者を大きく増やす要因となりました。また、最近ではオンラインでの申請が可能なポータルサイトも増え、より多くの人々が気軽に利用できるようになっています。

      魅力的な返礼品と自治体間競争

      ふるさと納税が多くの人々に浸透した理由の一つが「返礼品」の存在です。制度が始まった当初、返礼品を提供する自治体は少数でしたが、次第に地域特産品を活用した返礼品が注目を集めるようになりました。寄付者は地方の魅力的な特産品を手に入れることで、その地域を身近に感じるきっかけを得ることができます。

      しかし、この競争が過熱する中で、一部の自治体が換金性の高い商品券や電子マネーを返礼品にするケースも出てきました。この問題を受け、2019年に総務省は返礼品の価格を寄付額の3割以下にする規制を導入し、返礼品を地場産品に限定しました。この規制により、「地域特産品を通じて地方を応援する」という本来の目的が再認識されることとなりました。

      現在のふるさと納税

      現在のふるさと納税は、単なる税制優遇を超えた「地域と寄付者をつなぐ架け橋」としての役割を果たしています。地方自治体にとっては、税収を増やすだけでなく、地域の魅力を全国に発信する絶好の機会です。一方で、寄付者にとっては、応援したい地域に貢献できると同時に、その地域の特産品を楽しむことができる点が大きな魅力です。

      ふるさと納税の仕組みは、都市と地方の税収格差を解消するだけでなく、寄付者と自治体が互いにメリットを享受できる制度として、ますます進化しています。その歩みの中で生まれた課題を一つ一つ解決しながら、今後も日本の地域活性化の柱として機能し続けることでしょう。